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アルツハイマー病と24S-hydroxycholesterol

 

 高齢化が著しい日本社会において、高齢者における認知症の増加への対策は重要な課題です。アルツハイマー病に代表される認知症は、患者本人のQOL(Quality of Life)を下げるのみならず、患者を支える社会基盤に多くの負荷がかかってしまいます。そのため、認知症の治療薬の開発は社会的な要請であり、世界的に見ても重要な課題といえます。現時点での認知症発症に対する理解では、酸化ストレスや代謝産物、さまざまな環境因子あるいは遺伝子変異が神経細胞の機能を乱すことで細胞死を引き起こし、最終的に認知障害をもたらすと考えられています。しかしながら、その発症機構については未だ不明な点が多く、また完治をもたらす治療薬は開発されていません。神経変性疾患による認知症の中では、アルツハイマー病が最も多い疾患であり、現在、日本のアルツハイマー病型認知症の患者は2010年の推計ではおよそ250万人いるとされます。

 

 当研究室では、脳特異的に産生されるオキシステロール(酸化されたコレステロール)である24S-hydroxycholesterolに着目し、研究を行っています。24S-hydroxycholesterolは神経細胞特異的に発現しているcholesterol 24-hydroxylase(CYP46A1)という酵素によって合成されます。コレステロールは、そのままの形では血液脳関門を通過することができませんが、24S-hydroxycholesterolはこれを通過することができるため、脳のコレステロール恒常性を保つ上で重要な役割を果たしています(図1)。また、24S-hydroxycholesterolはアルツハイマー病と関連する可能性が示唆されています。私達は、24S-hydroxycholesterolが脳の健康性を保つ上で、次に示すような功罪両面の性質をもつと考え、研究を進めています。

 

 

 

 

 

 

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